2022年9月のメッセージ 担当:田島

みなさんこんにちは。9月のメッセージを担当します。田島です。

 

真夏を過ぎたとは言え残暑の厳しい季節ですが、いかがお過ごしでしょうか。

阿部オフィスの毎月のメッセージというのは中々ユニークで、各月の担当者が気の向くままに自分の書きたいことを書いて良い、というスタイルでメッセージを作成しています。

 

私の場合、メッセージを書く時には、「前は何を書いたっけな??」と振り返りながらメッセージを考えるので、前より良いものが書けるはずなのですが、実際のところはそうでもない、というのがまた不思議なところです。

 

今日も過去の記事を振り返りながら文章を書いているのですが、今の時点で気に入っている記事は2020年10月の映画についての記事です。自分が書いたにしては、なんだかまとまりの良い文章が書けたように思います。

その反対に、一番書き直したいなと思うのは2019年5月の“パンが好き”という記事です。

自分で書いたものながら内容がペラペラのフワフワでお恥ずかしい限りです。

 

今日は、“パンが好き”を越える記事を書くぞ、と指先に力を入れながらいつもより強めにキーボードを叩いているから、きっと力の入った文章となることでしょう。

 

さて、2020年10月の記事で書いた映画は邦題が「キオスク」といって、Robert Seethalerという小説家のThe Tobacconistという小説が映画化されたものです。ナチスが台頭してオーストリアを併合しようとする時期のウィーンを舞台にした物語でした。

まさか映画を見た時には現実に再び国家間の侵略戦争が起きるとは思いもしませんでしたが、よくよく考えてみると私たちの祖父母の世代は戦争を直接体験しているのですから、軍靴の響きは思ったよりも近くにあったのだし、これからもそうなのだと感じます。

 

そんな2022年の9月に差し掛かる前に、1冊の本を読みました。“本当のリーダーのみつけかた”という本です。

作者は元々、素敵な小説を数多く世に送り出していて、私自身何度も作品を読み返しておりお勧めの小説が幾つもあります。

ただ、この本は普段の小説とは少し趣が異なっていて、トークイベントの文章化をしたものです。ページ数も多くは無いのでさらりと読めるのですが、ハッとさせられる文章が並んでいて、ゾクゾクとした感覚を感じながら読み終わりました。

 

私たちは家庭や職場、地域で人と一緒に生活しています。多くの場合、心地よく過ごすためにお互いを尊重して、摩擦の少なくなるように、自然に適度な物理的・心理的な距離を維持しながら生活をしています。

でも、そうやって生きている中では摩擦や衝突が起こらないように、自然と他者と同じように考えようとしたり、知らず知らずのうちに自分の意見が左右されたりすることがあるようです。本の中では“同調圧力”というフレーズがあてがわれていましたが私自身にとっても馴染みのある感覚でした。

コロナウィルスに見舞われている私の身の回りでも、知らず知らずのうちに価値観や不安な気持ちが共有されていて同調圧力が生じているように思います。

例えば、電車の中で咳をしている人に向けられる“こんな密の場面で咳き込むなんてけしからん!!”みたいな怪訝な視線などは、感染への不安が高まっている時には解らないでもないのですが、苦しそうに咳をしている人が心配されこそすれ、責められるような雰囲気というのは、ちょっと変な感じになっているようにも思います。

 

この変な感じの背景にあるのは、私たちの不安な気持ちなのだろうと思います。自分が感染してしまったり、大切な家族を感染させてしまったり、そうならないように気を付けよう。という自分にとって大切な存在を守りたい気持ちが強くなって、他者に対する怪訝な視線になってしまったりするのだろうと思います。でも、その他者にも大切な家族が居たりするのだと思うと、普通はそんなに刺々した気持ちにはならない筈なのに、何故かそうなってしまいます。

 

そういう時に、ふと立ち止まったり、これで良いんだっけ?と自分で自分のことについて考えたり、そういうことができる心の余裕を持つことができたら、もう少し穏やかに日々を過ごせるのかもしれないなと感じました。

 

カウンセリングの場面でも、必要とされる人にはそんなふうに心の回復や自分の回復ができる、そんな時間を提供できればと考えております。